コミュニケーションのルール違反も論理的に学ぼう

●コミュニケーションのルール違反とは

「ことば学講座」ですね。

ことば学講座では、「言葉のより良い使い方」
「言葉によるコミュニケーション能力の向上」
「人間関係を良くする言葉」など、
「言葉」という道具の真のパワーを使いこなす技術を学びます。

上質なコミュニケーションを身につけ、良好な人間関係を築くために、
「コミュニケーションのルール違反」についても論理的に学びましょう。

たとえば、こんな相談メールをちょっと紹介してみます。

事前の予習だと思ってください。

職場に妙なコミュニケーションをする子がいます。
大人なので「子」呼ばわりは失礼ですが、まさに「子」なんです。
妙なコミュニケーションというのは、ちょっと不都合な場面や
叱られるなどストレスのかかる場面になると、
相手の様子を「解説」するようなしゃべりをして、
相手を煙に巻くというか、呆れさせるんです。
相手はコミュニケーションが成り立たないので疲れ果ててしまい、
叱るのを諦めます。

「解説」するようなしゃべりって、どんなしゃべりなのか、
想像できますか?

たとえば、ミスについて上司がかなり熱くなって叱り始めたとします。

すると、上司に対して返事をしたり謝ったり弁解したりではなく、

「うわあ、かなり熱くなっていますね~」
「カルシウム不足だとキレやすいそうです。補給しましょうかカルシウム」

のような返し方をするのだそうです。

それも、上司に向かって言い返すというより、
周囲の同僚たちに向かって「解説」しているような調子で。

そんなマネをしたら、火に油を注いで大変なことに、
と思いますか?

ところが、です。

火に油を注いで上司を逆上させ、叱責の時間が長引いた程度なら、
ごく当たり前の展開だから、相談メールを書こうとは思わないでしょう。

ところが、「ふざけていないで、ちゃんと話を聞かないか!」と怒る上司に

「おっと、さらに逆上してしまいました!」
「奥さんとケンカでもして不機嫌だったのでしょうか。ケンカですか?」

と煽るように続けて、上司を途方に暮れさせるというのです。

ギャグですね、ここまで行くと。

大人の世界ですから、いくら上司が激高しても殴る蹴るの事態にはならず、
この類の反応を無限に続けることができます。

仮に手を上げられそうになったら、あるいは軽く小突かれたとしたら、

「おおっと、ついに殴りますか? 暴力ですか?」
「傷害で人生を棒に振るのでしょうか。ホームレスですか」

なんて続けるのでしょう。

こんな話し方のせいでトラブルになって、会社を追われたり、
社内で居場所がなくなって孤立したりしているようなら、
単なる当たり前の結末です。

しかし、そうではない、というのです。

口うるさい上司に対しては、そんな奇妙な反応を繰り返して、
まともなコミュニケーションができない状況を作り出すのに、
お客さんやほかの同僚とはごく普通の話し方ができる、という。

お客さんを相手に話すときは、てきぱきと仕事をこなす優秀な社員。

だから余計に「なんかおかしい」と感じて、相談メールをくれたのでした。

誰ともまともなコミュニケーションができないのであれば、
まわりはそれなりの対応をするし、そもそも入社していないだろうし、
本人も「自分のコミュニケーションには何か問題がある」と自覚するでしょう。

しかし、口うるさい上司や、怒りっぽいベテラン社員にだけ
この奇妙な反応を繰り返すことで、まともな関わりをあきらめさせてしまう。

ほかの同僚たちの間には、「あの上司を撃退するとは」「画期的すぎる」
とこの20代前半の女性社員に半ば感心している雰囲気まであるという。

つまり、本人はコミュニケーションが苦手で「噛み合わない」人ではなく、
明らかに「意図的に」やっているわけです。

「厄介な場面を回避するためのテクニック」として
その人が身につけたやり方なのでしょう。

「見ていると、ある意味無敵だと感心しますが、
なにか釈然としないものも感じています」と相談メールにはありました。


●言語コミュニケーションの根幹に関わる重大なエラーとは

すばらしい。

コミュニケーションについて取り組み続けてきたあなただからこそ、
「コミュニケーションの本能」のようなものが育ってきて、
「何かがおかしい」と警告を発したのでしょう。

その違和感は、正しい。
ネイティブスピーカーの直感のようなものですね。

この新入社員のやり方は、明らかに「コミュニケーションのルール違反」を
犯しています。

それも、ごく基本的で、かつ重大なルール違反を。

どこに問題があるか、分かりますか?

今週の「ことば学講座」で詳しく解説する予定です。

ほかの同僚たちが「この対応は思いつかなかった」「画期的すぎる」などと
戸惑いながらも評価しているのは、
おそらく重大なルール違反に「基本的すぎて気づかない」からでしょう。

あなたは彼女のようなレスポンスをする可能性がありますか?

上司に「こらっ、こんなミスをしてはダメじゃないか」と叱られたときに、

「うわあ、かなり熱くなっていますね~」
「熱すぎて、お湯が沸かせるんじゃないですか。100℃でしょうか」

のような返し方をする可能性が1%でもありますか?

たぶん、ないでしょう。

あなたが上司だとして、部下のミスを咎めているときに
部下にこのような反応をされたら、どう感じますか?

おそらく激昂するか、途方に暮れるか、その両方か。

「その反応の仕方の何が、なぜいけないか」を
理由を挙げて論理的に説明できるようになってください。

すぐに熱くなって怒る上司より、
こんなコミュニケーションを意図的にする社員のほうが、
大人が集まって真剣に仕事をしている組織にとって、有害です。

「うるさい上司を黙らせた」などと喝采を浴びているとしたら、
その職場は組織として非常に危険です。

「うるさい人が相手だから良い」かといったら、そう簡単な問題ではありません。
お客さんとだって、ほかの同僚とだって、何かの加減で関係がこじれたら
おそらく同じテクニックを繰り出すのですよ。

言語コミュニケーションの根幹に関わる違反行為であって、
さらに上から呼び出されたり何らかの処分があったりしてもおかしくない、
重大なエラーです。

激しく叱られたときに取っていい対応から、遠くかけ離れています。

なのに、このコミュニケーション違反の理由を論理的に説明できなかったり、
ましてやかましい上司を黙らせたことに溜飲が下がる思いすらあるとしたら、
明らかに異常事態です。

ことば学講座の当日までに、この新入社員の話し方が
どんな「コミュニケーション違反」なのか、考えてみてください。

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