論理はなぜ愛の行為なのか

●「論理」は愛の行為

今、ことば学講座で「論理」のトレーニングをしていますね。

なぜあなたに「論理」を身につけてほしいのか。

論理は「愛の行為」だからです。

「えっ、論理と愛なんて、一番遠いところにありそう」
という声が聞こえてきそうですね。

確かに、

・理屈抜きに好き
・好きであることに、理由なんてない
・だって好きなんだもん

こういうのが本当の愛なんじゃないの? という感覚があるかもしれません。

しかし、論理と愛の関係は、もっと深いところにあります。

「相手本位なら、論理的になる」のです。


●学校の教科書や新聞は論理が弱いワケ

新聞記事や教科書の文章は、論理が弱い。

読み手に寄り添うスタイルではないからです。

思い出してみてください。あるいは今、新聞を開いてみるとわかりやすい。

「事実の列挙」が多いでしょう。

論理の代表である「根拠」(理由)や、
わかりやすく伝えるための「例示」(具体例)などが少ない。

「雪が80cm積もった」という事実を伝えるとしたら、
「8年ぶりの大雪」「都内でも20cmの積雪」といった事実を並べていく。

80cmの積雪が「20kgのダンベルを持ち続ける負荷に等しい」とか
8年ぶりの大雪だから「つまり○○と同じくらい稀な出来事」
といった解説はほぼ無し。

教科書もそうですね。

「アレクサンドロスが紀元前○○年に誰それを討伐した」と記述し、
その経緯を添える程度。

わかりやすい喩えなどしてくれない。

「これは喩えるなら、差し出されたチーズケーキを
今にも口に入れようとしたところで返せと言われるようなもので、
それを3回も繰り返されたら怒るのも当たり前」
と卑近な例に喩えてくれはしない。

だから新聞も教科書も、
「ほしい情報をがんばって読み取る」姿勢が求められます。

そういう性質の媒体だから、情報の提供側があれこれと工夫したり、
スペースを犠牲にしたりしながら説明を繰り返し、
なんとか納得してもらおう、受け入れてもらおう、
というものではないわけです。

「8年ぶりの大雪」という事実を、「なんとか受け入れてほしい」も
「納得していただけたでしょうか」もありません。

「こういう出来事がありました」と言い放つのみ。

「新聞ってわかりにくい。池上彰の解説はすごくわかりやすいから、
池上彰に新聞を書いてほしい」というコメントがありましたが、
新聞はもともと「情報提供」を目的としているのであって、
「理解」を目的とはしていないのだから、当たり前です。

受け入れてもらおうとも納得させようとも思っていませんからね。

ある意味、「事実は最強」ですね。


●論理は「つながり」だから

しかし、人間関係はそうはいきません。

人それぞれに考え方も立場も視点も違うので、
ある出来事の見方が一人一人違います。

「雨が降っている」という事実は動かしがたいように思えても、
ある人にとっては「また雨か。うんざり」とマイナス情報になり、
別の人にとっては「やった! さっそく昨日買った傘が差せる!」
といううれしい出来事になる。

つまり、人間の数だけ事実があるといえる。

だから「事実は事実」では終わりません。
「事実を伝えればいい」という姿勢ではうまくいきません。

相手に受け入れてほしい、気持ちよく納得してほしい、
良い関係を築きたいと思ったら、つまり「相手本位」の姿勢になったら、
自然に説明の仕方を工夫するでしょう。

そこに「論理」が生まれます。
「論理は愛の行為」とは、そういう意味です。

たとえば、「理由を添える」という話し方、書き方の技があります。
理由は、論理の代表です。

なぜ理由を添えるだけで、伝わりやすくなるのか。

「論理的になって、相手に寄り添うスタイル」になるからです。
「論理は愛の行為」とは、そういう意味です。

「論理」を一言でいえば、「言葉のつながり」。
言葉のつながりとは、すなわち意味のつながり、意識のつながりです。

途切れることのない、相手とのコミュニケーションです。

道案内を考えたら、わかりやすい。

相手を、相手との関係を大切に思う気持ちがあれば、
目的地まで途切れない案内をするでしょう。

「そんなの行ってみりゃわかる」
「わかんなかったらよっぽど方向音痴だよ。あはは」
「オレはすぐわかった」
「迷ったら誰かに聞けばいいじゃん」

と突き放したりしないでしょう。

論理とは、理屈っぽく相手を責める姿勢ではありません。
相手に寄り添い、気持ちいいコミュニケーションをするためのものです。

論理力を高めて、コミュニケーションを深めましょうね。

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