●「えっ、デザートもつくの!?」
昨日はことば学講座でした。
いよいよ「言葉の修業」が始まりましたね。
このタイミングに乗り遅れないように、毎日のあらゆる瞬間を
「言葉のトレーニング」にして、しっかりついてきてくださいね。
こういった機会って、たくさんあるようで、そんなにありません。
「チャンスの女神には前髪しかない」と言われますが、
「停車してくれないから飛び乗らなければならない路面電車」のごとく、
タイミングを逃したらもう乗れないんですよね。
「言葉の修業」に入るチャンスに、いま乗ってくださいね。
今回のことば学講座に出られなかった方は、次回はぜひ乗りましょう。
さっそくこんなメールが届きました。
「えっ、デザートもつくの!?」という台詞が、
マイナスのニュアンスを帯びて発せられた場面に遭遇して、
言い換えトレーニングをしてみたのだそうです。
レッスンを日常でしっかり実践していますね。
ちょっと長くなりますが、引用します。
その方は「え!? デザートもつくの?」と驚き、店員さんに向かって
「先に言ってくれれば」「今言われても」などと話されていました。
すでに紅茶を飲んでしまったので、デザートでの飲み物がないと
言いたかったようです。(中略)
良い感じに言い換えをするとしたら、「デザートも付くのですね!
知らなかった!もう紅茶を飲んでしまったのでお水をいただけますか?」でもここまで詳しく事情を説明すると店員さんに負担を掛けるので、
サラリと「えー!?デザートも付くんですね!お水をいただけますか?」と言い換えたら良い感じになるかなと思いました。
すばらしい!
何がすばらしいかって、最後の「プラスのワンステップ」です。
これがあるかないかで、「フツーの人」と「感じのいい人」の差になります。
「先に言ってくれれば」「今言われても」は、
まさに昨日のことば学講座で出てきた「言ってくれれば分かったのに」、
さらには根っこは「ほら言ったでしょ」と共通していますね。
「先に言ってくれれば」「今言われても」がイマイチの反応だとは
わりとすぐに気づきます。
しかし、事情や理由をあまり詳しく説明するのも、
かえって相手を恐縮させたり、責任を感じさせたりするところまでは、
なかなか気づかない。
「そこに気づいてほしかった」という自分本位な気持ちが
意図せずに漏れ伝わってしまう。
「ここまで詳しく事情を説明すると店員さんに負担を掛ける」
と思い至るかどうかが、「自分本位か相手本位か」にかかっています。
詳しい事情説明はたいてい、相手に「理解させる」ため、
つまり「自分のため」なんですよね。
相手は理解したがっているとはかぎらない。
すべては「分かってほしい」という気持ちから生じる「感じの悪さ」です。
「分かってほしい」部分をあえて取り除くことができると、
ワンランク上の「感じのいい表現」になります。
比較してみてください。
分かりやすいように、表現をちょっといじりますよ。
並……「えっ、デザートも付くの!? そんなの今さら言われても」
上……「えっ、デザートも付くんですね。そうとは知らず飲み物を
全部飲んでしまったので、水をいただけますか」
特上…「えっ、デザートまで付くんですか!?
うおっ、ラッキー! じゃあ飲み物を追加で頼んじゃおうかな」
「えっ、デザートも」の部分の言い方がまったく違うものになること、
しかも、ふだんからの思考パターンや姿勢がとっさにに出ることに
気づいたでしょうか。
後に続く部分の影響で「えっ、デザートも」の言い方が変わるのではなく、
もともとの考え方によって変わるのです。
ここまで繊細なのだから、言葉の修業は奥が深く、難しいんですね。
「“分かってほしい”の何が悪い。みんなそうじゃないの?」
と開き直ったら、ワンランク上の感じのいい言葉にはなりません。
「お金に余裕があれば飲み物を追加で頼めますけどね」と皮肉な卑下をしたら、
数年後に「結局は元のまま、何も変わっていない自分」に愕然とします。
「少し無理して、少し背伸びする」ことで、言葉が上達していくのです。
大事なのは飲み物を追加するためのお金ではなく、姿勢です。
「お水をいただけますか?」でもぜんぜん構わないわけですから。
●どこまで奥が深いんだ、言葉って……
しかも、この方が答えとして出した、
サラリと「えー!?デザートも付くんですね!お水をいただけますか?」
この「サラリ」加減がとってもイイ。
サラリと「お水をいただけますか?」と言っていますね。
(まだ実際に言ったわけではありませんが)
これをもし、「じゃあお水をいただけますか?」と言ったとしたら、
どんなニュアンスになりますか?
「じゃあ」が有るか無いかで大違い。
デザートの件とは無関係に「水をください」と言っていいのだから、
わざわざ「じゃあ」をつけることによって、
「デザートが来るのに飲み物がない」という“困った”状況に
対処しようとしている気持ちが出ます。
つまり、「対処しなければならない状況だ」と店員さんに伝える台詞になる。
だから、サラリのほうが「より上」なのです。
「えー!?デザートも付くんですね!お水をいただけますか?」だと、
「お水をいただけますか」が唐突な感じがしますか?
でも、そこは「こなれたコミュニケーション」の技で
「あ、すみませんが、お水をいただけますか」くらいにアレンジすればいい。
大した問題ではありません。
こういう言葉のトレーニングは、学校ではもちろんしてこないし、
大人になっても機会がないし、扱っている場所がそもそもありません。
これからあなたは、こういうレベルの言葉トレーニングに入っていくのです。
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