●必要なことをせず、必要でないことを重ねてしまう
文章に関するお悩みが続々と届いていますよ。
私も次回の「文章の書き方講座」がますます楽しみになりました。
今日は当日の予習として、「なぜ文章がうまくならないか」という話をします。
こんなメールが届きました。
「もうかれこれ10年も仕事で文章を書いているのに、
上司には叱られるわ、集客の反応は薄いわで、落ち込みます。
即席に効果の上がる方法は無いものでしょうか。
すみません。無いのはわかっているのですが……」
さすがは毎日書き続けているだけのことはあって、
お手軽な方法がないことを知っていますね。
まあ、文章の力がガラリと変わるコツがないこともないのですが、
ベースとなる「文章力」が高まってからでないと、効果は上がりません。
上級者が受講する音楽のマスタークラスをイメージすると分かるでしょう。
上級者は先生のたった一言で「あっ、分かった!」がありうる。
長年感じていた「天井」を一瞬で突き抜けてしまうこともある。
ところが入門者が同じ指導を受けても、ベースができていないから、
コツを聞いてもピンとこないし、技を使いこなせない。
「なぜ文章がうまくならないのか」というお悩みに対して、
ひとつの答えをレッスンしましょう。
それは、「必要なことをしないで、必要でないことを重ねる」からです。
ほら、もしかしたらこの一言で、「あっ!」と気づいたかもしれません。
効果的な文章には、必要条件があります。
必要条件を満たしていないと、文章の目的を達成することができません。
その条件を、仮に「A、B、C」とします。
この3つの条件を適切に満たしているのが、力のある文章です。
ところが、何かが不足していたり過剰だったりすると、
文章には力がなくなってしまいます。
不足とは、たとえば来店を促すチラシに「地図」がないようなもの。
見た人はどうしたらいいか分かりませんよね。
過剰とはたとえば、着付け教室のチラシに「畳のイグサの品質や産地」から
「教室の所在地の歴史」「講師が生まれた日に関する母親の思い出話」まで
講師のこだわりでなんでもかんでも記載するようなこと。
「知ってほしい」気持ちが強すぎると、そうなりがちです。
不足や過剰を簡単に記号で表すと、
(1)A、B
(2)A、B×2、C
(3)A、B、C、D
こんな感じでしょうか。
(1)は必要な「C」が欠けている。
(2)は「B」を過剰に語っている。
(3)は余分な「D」が全体の効果を下げてしまう。
ここで問題です。
(1)の人は、何をしたら文章が良くなるでしょうか。
(2)の人は? (3)の人は?
●「言語行為」は会話も文章も同じ
答えは簡単ですね。
(1)の人は、Cを足せばいい。
(2)はBを適度なレベルに抑えればいい。
(3)はDを取り除けばいい。
ところが、問題はここからなんです。
多くの人の傾向ではあるのですが、「必要なことをやらず、
必要でないことをやる」せいで、ちっとも「A、B、C」にならない。
文章や言葉に対する意識から変えないと、
(1)の人は「Cは好きではない」などと言いながら放置したままだし、
(2)の人は「Bが大事だと思うんです」とさらに「B×3」にしてしまう。
(3)の人は「Dにも興味を持つ人がいるかもしれないので」と
相変わらず余計なことまで書いてしまう。
※ここ、すごく大事なところ!
だから、ますます「効果の低い文章」になっていくのです。
頭で理屈っぽく考えて納得しながら書こうとしているかぎり、
「今までと同じ結論」しか出せないので、
結局は「似たような文章の域を脱することができない」のです。
会話だろうとスピーチだろうと文章だろうと、
すべての「言語行為」について言えることですね。
この流れを変えるのが、「季節の講座」(文章の書き方講座)です。
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